本研究においては、パーソナル・コンピューターを使ったデータ・ベース作成と、現地調査を通じた社会関係の復元作業が二本柱となっている。その内容は以下に記すが、重点が当初の研究計画と多少ずれることとなった。その理由については、「研究成果報告書」を参照されたい。 前者については、越後上杉氏の奉公人関係史料の入力作業と、甲斐武田氏の恵林寺領検地のデータ入力を行った。その結果は「研究成果報告書」に載せてあるが、大名検地の目的を在地支配体制との関係で検討する上で、有力な手掛りを得ることのできるデータ・ベースとなった。 後者については、越後阿賀北地方(有力な国衆の蟠踞する地域)と、安芸山里地方・周防山代地方(在地領主支配が弱く、大名領国への編入とともに直接支配下に入った地域)との調査を行った。両者の対比によって、在地支配体制の総合的評価が可能となる。 以上の作業から得られた成果の詳細は、「研究成果報告書」を参照されたいが、基礎史料であっても、その利用の仕方には荒いものがあり、コンピューターを利用した悉皆的分析によって、今まで見落とされてきた問題が浮かび上がってきたことは、この方法の重要性を再確認させるものであった。同様のことは、現地調査についてもいえる。問題関心の変化とともに調査内容も変わらざるをえないので、常にフィールドに立ち戻る重要性が再確認された。特に、現在景観の破壊が急ピッチで進行し、農山漁村の過疎化も進んでおり、この問題は時間との闘いともなっている。今回補助金の交付をうけて、重点的に作業を行うことができたが、今後も継続して行う必要性を痛感している。
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