研究概要 |
東大史料編纂所・内閣文庫・大阪城天守閣等に架蔵されている未刊行文書や,諸種の編纂物に収められたものの中から,豊臣秀吉(およびその一族)発給文書を,かなりの点数採録することができた。これに基いて,『豊臣秀吉文書目録・補遺』を刊行する予定である。様式は1989年に刊行した正編と同じであるが,当該文書の所在や収録文献名などを加えるので,検索が容易になると思われる。この作業の過程で,新たな文書を発見できたほか,既知の文書の原本の有無等を確認できたことは収穫であった。これらの文書に添状を書いている奉行人を更に多く確認することができた。奉行人クラスの発給文書についても数多く蒐集しているが,分類の基準が定まらないので,全容を示すことができないが,近い将来『豊臣秀吉奉行人文書目録』の作成も期したいと思う。奉行人発給の添状と,奉行人連署奉書との様式や機能の相違についても考慮する必要がある。藤田恒春氏の多年の努力によって『増補駒井日記』(文献出版)が刊行され,信頼するに足る底本が学界の共有財産となったことは幸いであったが,この中にも多くの秀吉(および秀次)発給文書が収められている。今後は日記・記録や地誌類に採録されている文書類について,重点的に調査・研究することが必要となるであろう。 陣立書に関しては別に記した通りであるが,本年が豊臣秀吉の朝鮮出兵から400年にあたることから,この戦役に関する史実の再検討を行う気運が高まった。シンポジウムを通じて韓国の史学者と討論した成果をふまえて「豊臣秀吉の対外政策」(韓国史論22)を草したが,そのなかで,石田三成ら舟奉行,垣見一直ら軍監,陣立書にみられる側近衆などの動きに着目している。豊臣政権の奉行人組織については,いわゆる「五奉行制」の誤ったイメージにとらわれがちであるが,政治過税の展開のなかで,具体的事例を積み重ねていかなければならない。
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