平安時代の中央国家機構に関する研究が進展しつつあるが、そこで強調されていきたのは、蔵人所による新設内延諸官司(「所」)の統合と自己完結化、律令制的官司統属方式(太政官ー省ー寮・司・職)の解体と太政官系列の諸官司の自立化、特定氏族による官司請負=「家業」化などについてであり、これらの現象が、律令国家の中世国家への変容の指標として積極的に意義づけられてきた。しかし、個別官司はいかに自立性を高めようとも、宮延で行なわれる政務・行事・儀式の執行に参加する一部局であるところにその存立根拠がある。したがって宮延中枢は、これら蔵人所系列と太政官系列の独立諸官司を、政務・行事・儀式に有機的に結合する新たな統属方式をつくりあげていたと想定されなければならない。そこで注目されるのが、公卿・殿上人・弁官局官人・蔵人を、「所宛」(ところあて)によって太政官系列諸官司と蔵人所系列諸所の「別当」に任命する「諸司所々別当」制である。本研究の目的は「諸司所々別当」制の諸官司統合機能の実態と特質にせまることであるが、本年度は、主として研究史の整理、関係史料の調査・整理を行った。 次年度は、今年度に引き続き、関係史料の調査・整理を行うとともに、研究のまとめを行い、できれば論文として公表したい。
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