近世の土地売買とこれをめぐる社会慣行を究明することによって、前近代における共同体的社会関係の在り方を解明することが本研究の目標であるが、さしあたっては、近世の土地売買の中心であった質地売買とその慣行にかかわる史料を全国的に収集・整理する作業から着手した。平成3年度は文部省史料館・岐阜県文書館などの所管史料の調査を実施した。文部省史料館では武蔵国掛川家文書、同吉田家文書、祭漁洞文庫旧蔵文書、甲斐国下井尻家文書、同秋山家文書、出羽国宝幡寺文書、上野国萩原家文書、伊豆国大川家文書、信濃国土屋家文書、相馬家文書、下総国木村家文書、美濃国千秋家文書などの写真撮影を行った。また、岐阜県文書館では日濃国赤座家文書、林周教氏蒐集文書、井深家文書、宮川家文書、山田家文書などの写真撮影を行った。この結果、関係史料をフィルム270本余に収集することができた。これと平行して、フィルムの整理作業を行い、一部をマイクロコピ-により焼付け、内容の点検作業などを実施した。史料収集・整理作業ともに、作業の途上であり、不充分なものであるが、東国を中心とする地域の質地売買と請戻し慣行に関する貴重な事例を多数収集することができた。とくに、従来、研究を進めていた関東以外に、信濃・美濃でまとまった関連史料を収集することができたのは大きな成果であった。次年度は、さらに文部省史料館所管史料の撮影などを実施し、研究の一応のまとめを果たしたい。
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