資料調査については、東京・たばこと塩の博物館に1回、広島大学に3回、赤穂市立歴史博物館に2回実施した。たばこと塩の博物館の調査では新居浜市の小野家資料、香川県直島町の島塩産株式会社資料の写真焼付けをした。広島大学においては、従来塩業関係論文など公刊されているもののうち、雑誌などを中心にコピ-していった。赤穂市立歴史博物館では、赤穂西浜塩業組合の資料を収集することができた。 購入した図書は、日本専売公社発行の『日本塩業史』、同『戦後日本塩業史』、香川県塩業組合連合会発行の『香川県愛媛県塩業組合(会社)沿革史資料』、『鳴門市史』全3巻である。 一方、香川県・松枝舎の生島塩田の経営資料とたばこと塩の博物館蔵の宇多津塩田の経営資料については、具体的な分析作業をおこない、近かく論文として「香川県における製塩業の展開」を公刊の予定である。以下、その概要を記しておきたい。 近代以降の香川県において、製塩業は急激な発展をとげた。特に明治20年以降、西譛地方において新たな塩田の築造が次々に行われた。その結果、明治12年には瀬戸内7県のうちで香川県の塩田面積は最も小さかったが、明治末年には最大面積を擁するようになった。新たな塩田は規模も大きく生産力も高いことから日本の代表的な塩田となった。このように香川県は日本の代表的な塩田を擁し、県単位の塩田面積も最大でありながら、その実態はそれほど究明されているとはいえない。そこで本論文では県下全体の塩田を概観したうえで、その地域構造を分析した。まず、小規模塩田の代表である東讃塩田の一つ、生島塩田を、その所有者松平家資料から分析し、さらに大規模塩田の代表として、西讃塩田の一つ宇多津塩田について、宇多津塩田株式会社の経営資料から分析し、それぞれの塩田の特色・経営のちがいを比較的にみた。
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