1.本研究の目的は、唐・宋間における支配層の階層的・地域的構成とその変動状況に関する基礎的データを、最近爆発的に多量に公刊されつつある当代の新史料集を2年間に亙って精査したうえ、報告書としてまとめあげること、であった。そしてこの2年間の研究実績を略述すると以下の如くなる。 2.(1)まず唐代史部門では、(1)吉岡真が唐朝最盛期の中央官僚機構内要職就任メンバーに関する伝記・系譜史料・墓誌写真を収集、分析し玄宋朝の政権内部構成とその変遷過程や就任官人群の地域・階層的特質を容易に一覧しうる「人的構成年表」とその基となる「史料考証」を作製した。(2)更に吉岡は唐代官人多人数の分析作業にとっては必須の史料である現存唐代墓誌約4000〜5000点の系統的整理を進め、従来の文集・漢籍に収録の唐誌=草稿・録文に加えて、近刊の『千唐誌』北京図書館蔵誌・『随唐五代墓誌〓編』など新公刊の唐誌拓写真多数を精査・編年整理を行いつつあり、近い将来、現存唐代墓誌の全体を見通すことが出来る総合目録を公表する予定がある。 (2)次に宋代史では寺地遵が、南宋朝政権の崩壊期における地域事情の解明に着手し、その一例として台州黄厳県の地域発達の過程を地方誌・鐘銘・墓誌等の新史料を駆使して復元し、在地支配集団を核とした官民一体の「地域」=黄厳が南宋末に実現したこと、まさにこのことが南宋崩壊期に浙東地方では数少ない、モンゴル軍への軍事的抵抗が、在地地主の連合によってこの黄厳県で試みられた歴史的背景であったことを克明に分析した。 3.以上この2年間に亙る研究実績の内容は、別途提出の『研究成果報告書』の中にその実績の一部が盛り込まれている。
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