1.中国・朝鮮・日本で著された19世紀以前の甘藷栽培技術書の収集と所蔵研究機関での追加調査成果 (1)調査初年度に、現存する甘藷栽培技術書は、中国が2種、朝鮮が4種、日本が8種と報告したが、その後の調査で中国の清末の李遵義が『種藷経證』を著していることが判明。本書は京都大学人文科学研究所東洋学文献センターに所蔵されている。 (2)日本の甘藷栽培技術書の中で、江戸期のものではないが、国立国会図書館に明治初年の愛媛地方(神山県)の甘藷栽培事情を記した『甘藷の説』(草稿本)が所蔵されていることが判明。本書は江戸末期以降の九州・四国および近隣地方の甘藷栽培事情を記録した一級資料である。 2.中国の甘藷栽培技術書の東アジアにおける影響 (1)ひとつの事例として『金薯伝習録』について、文献面で追跡調査をしてみた。その結果、本書が江戸期の薩摩藩の本草学方面に重大な影響を及ぼしていることが判明した。この点については論文「中国の甘藷栽培技術書が日本に及ぼした影響」を発表して明らかにしておいた。 (2)明末の徐光啓が著した『甘藷疏』(現在、逸文のみ伝存)について、朝鮮の農書から本書を検出する作業を行い、ほぼその作業を完了することができた。 3.今後の課題 (1)甘藷栽培技術書の史科集の分量がかなり大部なものになりそうなので、今回の最終年度の報告とは別に、史科集の刊行を計画したい。
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