本研究の目的は、英語の複合形容詞に見られる形態的特徴及び統語的特徴を、個別性と普遍性という両方の観点から明らかにすることである。具体的に言えば、(1)繰り返しをどの程度許すか、(2)本来の複合形容詞(例 tax-free)と動詞の分詞形が現われる複合形容詞との共通点と相違点は何かなどの形態的特徴を解明するとともに、どういう複合形容詞がどのような補部(complement)をとりうるのかという統語的特徴を解明する。さらに、(3)日本語の複合形容詞の形態的・統語的特徴との比較を行ない、複合形容詞の普遍性を明らかにする手がかりを得る。以上のような点に関して、本年度は研究を進めた。その結果、次のような知見を得た。 (1)については、coke bottle green、ginger ale bottle green、dishwasher-proof、motor car accident proneなどのように、複合語の左側の要素に複合名詞が現われることは多いが、右側の要素(主要部)の形容詞の繰り返しが見られるのは、motor car accident prone seemingのような場合に限られることがわかった。 (2)については、tax-freeやpropane-loadedなどのように、パラフレーズするとA(Ved)P NP(Pは前置詞を表わす)のようになるものが主な型を構成しているというような共通点がある一方で、等位構造を示すのは本来の形容詞の場合のみに見られる(例 deaf-mute)というような相違点もある。いずれの場合も、後に前置詞を補部としてとるように語彙部門で指定されているものが多い。 (3)英語の統語構造の基本はhead-initialであり、語構造の基本はhead-finalである。一方、日本語では統語構造も語構造も基本はhead-finalである。head(主要部)の位置は結局パラメータによって決定されるが、head-initialな構造からhead-finalな構造に変わる際に一般的な過程が見られることがわかった。 2年間の研究で複合形容詞の一般的な特性がかなり明らかになった。
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