研究概要 |
本研究で調査予定のエリザベス朝散文作家のうち、本年度は2人の作家について、分詞構文がどのように使用されているかを研究した。取り上げた作品はThomas Deloney:Jack of NewburyとThomas Nashe:The Unfortunate Travellerである。実施した研究手順は次の通り。 (1)両作品をOCRで読み取らせ、校正のうえ、各種の整形を行った。 (2)コンピュ-タによる分析のために、計12個のプログラムを独自に開発した。(テキストの行番号付、分詞構文を含むものと含まないもの別に文の語数記入などのプログラム) (3)分詞構文に関係すると思われる統語的・文体的・談話文法的要素約60項目を設定し、Card3,「パラドックス」を用いて、すべての用例をコンピュ-タ-で分析した。 分析結果の整理はまだ終了していない(来年度調査予定の作品との比較が必要なため)が、これまでにすでにいくつかの重要な事実が判明している。たとえば、(1)両作家で分詞構文の出現比率がいちじるしく異る。(2)デロニ-では、この構文が使われている文は使用されていない文の2倍の語数を持つのに対して、ナッシュではそのような違いは見られない。(3)ナッシュには絶対分詞構文が特徴的な使われ方をしている。たとえばこのような結果から、ナッシュの散文は掉尾文的、デロニ-のそれは散列文的傾向が強いと言えるであろう. 本年度は手紙や資料の交換により、北欧の研究者からの助言を得たが、来年度は5月にコペンハ-ゲン大学での辞書学シンポジュ-ムに参加し、8月にレイキャビック大学で北欧英語教官連合会大会に出席し、専門の研究者たちから直接助言を受けたり、問題点の討論を行う予定になっている。
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