前年度に行ったThomas NasheとThomas Deloneyの英語の分析に続いて、平成4年度は、John Lyly:Euphuesを取りあげた。具体的な作業としては、先ずOCRで作品を読み取らせ、テキスト加工のための各種ソフトを用いて、本研究の目的に適した形のコーパスを作製した。次に、そのコーパスに現れる分詞構文分析に必要な個々の用例のデータを、約80項目に絞ってコンピュータに入力し、様々な検索を通して、Lylyの作品における分詞構文および関連構文の使用状況を調べた。 この研究の目的の一つは、コンピュータに専門的な知識のない英語研究者にも自力ですべての作業が行えるような形で、以上のような調査をパーソナル・コンピュータを用いて出来るだけ能率よく行うための方法を探ることである。そのために、エディタ(Mifes)の簡易プログラム言語(Mil)を用いて、テキストを加工するための多数のプログラムを新規に作成したり、昨年度作成したものを改良した。 作製したデータベースに基づく様々な検索の結果の中で特に重要と思われるのは、Lylyの英語においても、他の2作家におけると同様、分詞構文の使用されている文の語数が使用されていない文のそれより著しく大きいことである。分詞構文の本質を考えるうえで示唆的な事実であると思われる。なお、この構文の使用頻度の点では、この作家はデロニーとナッシュの中間である。 今後の予定:同時代のPhilip Sidneyの英語を分析するとともに、ヘルシンキコーパスに収められている多様なジャンルの散文を今回と同様に分析して、これまでの共時的研究に対する通時的位置づけを補強したいと考えている。
|