1.本研究は、プログラミング言語prologを用いて、現代フランス語の中心的構文を持つ文を自動解析するプログラムを作成することを目指しつつ、これ通して、構文の重要な担い手である動詞の統辞・意味論的研究を進めることを目的としている。この2つの目的を、便宜上、「実践面」および「理論面」の研究と呼ぶ。 2.理論面では、「動詞結合価」の理論を中心に、本年度は、とりわけ、A.MARTINETの機能文法における扱いとM.GROSSらのlexiqueーgrammaireにおける扱いの相違を明らかにすることに力を注いだ。両者の間には、「結合価」理論の中に「機能」という概念を如何に取り込むかについて大きな相違があることが明らかになった。 3.文の構成素の表面的形態、それが相々な異なる文脈でとる統辞上の行動(代名詞化、疑問詞化など)、それの表す意味などの観点から、現代フランス語の記述にとって必要な機能単位を幾種認めるべきかについて、全般的な考察をおこなった。理論面における未解決の問題も少なくはなく、更なる考察は来年度も続けるが、現段階では、一般に認められている主語、直接機能、間接機能、与格機能、時・場所の状況機能などを措定し、実践面での自動構文分析の結果もこのような単位として出力する方向で研究を進めている。 4.実践面のプラグラム作成では、「確定節文法」に基づくトップ・ダウン型分析法により、直接・間接目的機能の補足節、間接疑問節の自動分析については、前編集のない文を入力し、これに形態素修正を加え、更に、文中の活用した動詞形を不定詞に戻して辞書を検索するという手順を踏んで、文を機能的構成単位として出力するプログラムを作成した。理論面での進展に伴って、扱える動詞、形容詞の数と構文の種類を増やしてゆくことが来年度の研究の中心課題となるが、本年度の成果はこの目的に対して明るい見通しを与えるものと信じている。
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