今年度に考察の対象としたのは、以下の諸点である。 1.スワヒリ語の起源と生成 (1)バンツー諸語の要素とアラビア語諸方言の要素に関して、語彙、文法、意味分野での比較分析。 (2)スワヒリ語をアラビア文字で表記する際の問題点。 2.古典期スワヒリ文学(詩著)へのアラビア文学の影響 (1)特に叙事詩について 3.古典期スワヒリ詩人の生活 (1)ムヤカ・ビン・ハジ・アル・ガッサニイの生き方を通して、19世紀モンバサの文学的風土と感性を追求した。 (2)『ラム年代記』を通してラム島住民の歴史と風土を追求した。 4.スワヒリ民話のモチーフとタイプの分析 (1)神話、伝説の分野ではアラブ・イスラムの影響が濃いが、動物昔話、ことわざ、その他言語遊戯などはむしろバンツー諸語からの影響が濃いことがわかった。 (2)アラビア伝来の民話の中にも、各種のモチーフ(例、人を呑み込む怪物、そう入された歌、ダンスなど)はアフリカ大陸内部に合致するものが多い。 5.スワヒリ叙事詩「アル・インキシャフィ」の言語的分析。 今後の計画 1.考察の対象が多岐にわたり、今年度に予定した中間まとめが未整理である。93年度(最終年)で全体をまとめたい。
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