宮岡はとりわけエスキモ-語のフィ-ルドワ-クによるデ-タの分析、早津は日本語の用例カ-ドの分析によって、動詞分類の枠組みの精緻化をはかる基礎作業をすすめてきた。 その過程において、宮岡は、日本語とエスキモ-語には動詞形態法上たしかに重要な差異はあるものの、そのいわゆる非動作主的な二項動詞(他動詞にほぼ相当)が、かつて早津(1988など)が明らかにした日本語相対他動詞の意味的ならびに統語的特徴に著しい類似性と平行性を有することを確認しえた。研究発表欄(11)の雑誌論文宮岡(1992)は、この成果の一端である。 一方、早津は、そのいう「所有者主語の使役」構文(例、男は目を光らせた)の分析によって、動詞の自他対応と関連付けながら、どのような場合になぜ使役形にすることが必要になるかを明らかにした。雑誌[紀要]論文早津(1991)は、この成果の報告である。 さらに、両人が資料交換ならびに共同討議によって、日本語のこの種の使役形は、エスキモ-語の使役接尾辞(vkarー1ーcicー)が従属動詞形においてなんら使役を含意することなく、単に名詞項を増やすための手段として働く場合と機能的に通じるものであるという理解をえたことは、重要な知見というべく、適切な機会において公刊することを予定している。 以上のごとき成果をふまえて、平成4年度においてなすべき作業とデ-タ蒐集の方向を確認しあった。
|