本年度は、これまで蒐集された資料にくわえて、宮岡と早津がともにアラスカでエスキモー語の聞きとり調査をおこなうことができたためにより細部にわたって、話者の反応を確かめながら、分析と総合に必要な資料を得ることができた。 宮岡は、前年度において得られた確認にしたがって、エスキモー語のいわゆる非動作主的な二項動詞の意味的ならびに統語的特徴にかんする理解を深化させ、早津がこれまで明らかにしてきた日本語相対他動詞との類似性と平行性の性格を闡明する努力をつづけた。 早津は日本語の動詞分類について試みられてきた枠組みを総覧することによって、その精緻化をはかる作業をすすめてきた。研究発表欄(11)の図書(共編:1993)は、この成果の一端である。 さらに両名は、資料交換と共同討議をつうじて、日本語の使役と受身のあいだにみる一種の相通性について、一定の理解を得、この点にかんするエスキモー語の使役構文との比較をおこなった。研究発表欄の早津論文(1993)は、このあらたに得られた理解の輪郭を提示せんとしたものである。 日本語とエスキモー語以外の北方の言語における動詞の自他は、研究発表欄の宮岡編(1993)で扱われ、今後、日本語とエスキモー語のそれとの対比をなす手がかりを与えている。 以上のごとき成果をふまえて、本研究計画の最終年度(平成五年度)においてなすべき作業とデータ蒐集の方向を確認しあった。
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