平成4年度は、平成3年度に記述した朝鮮語・日本語と、英語の現象面の違いのうち理論的に重要なものを抜き出して、重点的に比較対照を行い、その結果を理論化し、理論を実証していくことを目標に作業を進めた。一定期間に、原理的違いを取り出せる可能性がある現象として、格標識、指示詞、談話標識、人称表現、条件文を選び、重点的に比較対照を行った。当初の目的はほぼ、達成し、次の点における成果を得た。 1.格標識:現代朝鮮語と現代日本語の格標識についての比較を行い、両者の違いを生み出すパラメータ的違いに関する理論を提出した。現代日本語、日本語の古典語の格標識についての比較を行い、両者の違いを生み出すパラメータ的違いに関する理論を提出した。これらは、原則として同じ理論的枠組みを採用し、結果を相互参照できるようにした。2.談話標識:現代日本語と日本語の古典語談話標識に関する記述を行い、これを理論化して、比較のための記述装置を作成した。これにより、朝鮮語の談話標識の記述を行い、英語との比較をする予定であったが、時間的に果たせなかった。3.指示詞:談話管理の理論により、日本語、朝鮮語の指示詞の比較を行い、成果を得た。4.人称表現:現代日本語の人称名詞の記述を行い、これを理論化して、中国語、日本語、英語、朝鮮語とを比較する枠組みを作った。5.条件表現の比較のための理論を提出し、日本語・朝鮮語と英語の条件表現の比較を行った。6.(2-5)の語用論的現象について、それぞれ、相関があり、より大きいパラメータ的変異が存在する可能性があること示した。
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