本研究の目的は、「日本語・朝鮮語」と「英語」という大きなパラメータ的変異と、「日本語・朝鮮語」という同じ類型的グループの中でのより細かいパラメータ的変異を研究することにより、これらの言語間の差異が一般言語学的にどのように位置づけられるかを明らかにすることである。 このアプローチにより、これらの言語の記述の精度の飛躍的な向上と、言語間の可能な差異に関する一般言語学的貢献が期待される。この目標のもとに、以下の現象について3言語間の記述と比較を試みた。 (1)特に属格と主格、対格と主格の交替のメカニズムを中心に、日本語(現代語、各方言、中世、古代)、朝鮮語、英語における格付与のシステム (2)(1)のシステムから予測される、名詞句の構造 (3)名詞、代名詞(有形、無形)の照応関係 (4)指示詞、人称代名詞を中心とする指標表現と情報の帰属領域 (5)談話マーカーと文構造 (6)条件文における意味論と談話管理システム これらの現象は、独立した起こっているのではなく、多くが相関していることが明らかになった。この結果、これらの現象を、比較的少数のパラメータの値の違いにより、導出する可能性が示された。この可能性を記述するための理論装置を提出し、日本語現代語、各方言、古代語、朝鮮語、英語の相違を明示的に示すための仮説を提出し、その一部を検証した。以上の結果を研究論文、研究発表とした公表した。
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