研究概要 |
1991年から3年間にわたって継続してきた本研究は、初期近代における(フランス)法学のありようを従来のように包括的に把握するという立場をいささかなりとも脱して、個々の法学者が対象素材にたいしてどのようなスタンスをとっていたかを明らかにすることに焦点を絞ってきた。その際留意した点は、各法学者が個別的な法素材をどのように分析したかに向かうよりも、まずむしろ、H.E.Trojeが方法的に指摘したように、法源領域において前時代と比較してどの程度にまで拡大していったのか、問題領域においてどのような広がりをもったのか、それを推進するに当って確かな方法的アプローチがなされたのか、を検討することにあった。これらの諸点につき、「研究成果報告書」(1994.3,A-4判,65頁)において指摘したとおり、とりわけ、キュジャスの法源領域の広がりは、法の諸相を歴史的方法により歴史的な諸段階のものとして明確に把握するという立場を示すものになったことが明らかとなった。この歴史的分析の方法は、専門歴史家が登場したときに、法史学を含む歴史学の確固たる方法ともなっていったことも同時に明らかとなった、と考えられる。
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