1本研究は、(1)人の生活や産業・経済活動に不可欠な存在であるが、稀少で絶対量に限界があり再生産が原則として不可能であるが故に、投下資本や労働の量に比例せず常に投機的価格を形成する、資本主義における「特殊な商品」であることを踏まえつつ、(2)土地税制が、逆に政策的利用の可能性を生み出すことに着目して、「土地の公共性」の観点から、総合的な土地政策の一環として、その政策的利用の意義と限度(特に歳入の法理および機能と政策的利用との法的調整の可否)を法学的に検討すること、を主要な目的とするものであった。 2その結果、まず、法理論的課題として、土地保有に担税力をみる代表的学説(純資産増加説)としての包括的所得概念の分析と、財政学において展開されたその守備範囲を法学的に明らかにした。この成果は、特にわが国の土地税制の中心に据えられてきた土地譲渡益課税の理論的根拠とした主張された上記学説について、それに基づいて実際にできあがった租税制度との相違の法的評価(功罪)を行い、土地の保有や譲渡および得られる収益に担税力をみる租税制度のあるべき理論的形態の検討として得られたものである。 3次に、それに基づいた本研究の主題である土地税制の政策的利用可能性に関する検討として、特に1969年度以降の土地税制の法構造的特色を明らかにし、土地譲渡益課税中心の政策的利用の限界を法理論の問題として解明することができた。なお、土地政策関係省庁におけるヒアリング調査等を通して、土地基本法もさることながら、土地政策についての実質的な総合調整権限をもった国の機関が存在しないことが土地税制の不徹底ないし理論的混乱に寄与している実態も把握することができた。 4なお、当初三ヵ年計画であったために、比較法研究の成果を十分に挙げるまでにはいたらなかった。
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