1991年度(平成3年度)は領域を異にする三個の自主規制について検討した。 1 表示および景品規提供についての自主規制である公正競争規約の検討を通じては次の知見をえた。公正競争規約は、内容的には、実質上法律の細則としての役割を担っている。景表法のみならず、それ以上のいわゆる業法で定められた表示等に関する業務関連規定の趣旨を取引実態に即して機能させる内容のものとなっている。このような自主規制規約中の条項を行政法承継型と呼ぶことができる。 2 不動産取引の自主規制については、業界の支援による戝団の自主規制方式の下で、媒介契約に関する会員間の権利義務が明確化される現象が生じている。また、業界団体である社団の倫理規定としてこの点に関する行為準則が定められている事例についても言及した。業者間の権利義務は従来民法法理にゆだねられており、それも必ずしも明確ではなかったことからいって、関係団体がその規範を確定したことには重要な意義がある。次年度の研究では、不動産取引の自主規制を補充するため、不動産仲介情報の提供と自主規制に言及する予定である。 3 個人信用情報の自主規制についてはこうである。ここでの自主規制は現在のところ法的拘束と関係しない最軽度の訓示的性格を保つにすぎなにように思われる。現在もっとも求められるのは、民事的観点から基準化された準則をも包含する個人信用情報業務の処理マニュアルである。 4 平成4年度においては以上の研究成果を踏まえて自主規制規範の私法的意義について総括した論文をまとめることを計画している。
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