本年度は、ASEAN(東南アジア諸国連合)のインドシナ問題と経済協力問題に関する取り組みの1970年代末から80年代末までのクロノロジ-を作成した。この作業の結果、ASEANにおいて外相(ないし外務省)レベルでの接触と経済閣僚(ないし経済政策担当官庁)レベルでの接触とがリンケ-ジせず、いわゆるASEANの双頭制が確認できた。次年度はクロノロジ-を研究材料とするためのデ-タベ-ス化を検討することになろう。 また、従来手薄であったASEAN各国の政治経済研究についての基礎資料を収集した。各国の国内政治情勢・経済開発政策・対外経済政策・安全保障政策の相互関連の分析は今後進めなくてはならない。この作業により、ASEANレベルの活動が各国の国内事情とどのようにリンクしているのかが明らかになるだろう。 なお1992年1月末に第4回ASEAN首脳会議が開かれた。これは本年度の研究対象範囲ではなかったが、1980年代のASEANの協力の総括の意味もあり、臨時に首脳会議の分析もおこなった。この会議は、インドシナ問題の決着(少なくともASEAN諸国政府にとって)と欧米における地域主義の進行(ASEAN諸国経済にとってのブロック化の脅威)を受けて、ASEANとしての統一見解と統一行動とを模索するものであった。成果として、拡大外相会議を活用した安全保障協力とASEAN自由貿易地帯化をめざす経済協力とが合意された。これは、本研究課題であるインドシナ問題と経済協力をめぐって80年代をつうじて対立してきたASEAN諸国政府が90年代の新たな国際環境の中で対立に一応の終止符を打ったことになる。この意味で、本研究が1970年代末から10年間をひとまとまりとして分析することの意義が確認されたことになる。
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