東南アジア諸国連合(ASEAN)は昨年第4回首脳会議を開き、地域協力の全面的強化、特に経済統合をうたった。1990年代はASEANにとってきわめて重大な発展の機会であるとともに、経済格差の拡大や環境悪化などの問題を抱えるのみならず、民主化や指導者の世代交代など政治課題にも直面する困難な時期となろう。現在・将来のASEANを分析するためには、本研究の分析対象である1980年代の解明がきわめて重要である。 本年度は、ASEAN各国の国内状況に関する基礎資料の収集・整理を進めた。さらに、組織としてのASEANの文書の収集・整理を試みたが、国内で組織的に所蔵している機関がないため、さらに作業を続ける必要がある。また、東南アジアで発行された新刊書の一部を購入した。研究作業としては、昨年度と今年度にかけて収集した資料にもとづいて、特に経済協力をめぐる加盟国間関係の分析を開始した。1977年に開始した経済協力が80年代を通じて殆ど前進しなかったこと、80年代にヨーロッパや北アメリカにおいて地域主義が高まったこと、そして80年代後半に実質的にASEAN諸国経済がアジア太平洋経済全体の中に統合されていったことが、最近のASEAN地域における地域協力への関心の背景にあることが明らかになった。 カンボジア問題をめぐるASEAN内部の関係については、さらに資料などを入手する必要があり、今後の研究課題である。また、データベース化については現在いくつか検討中である。
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