本研究の目的は、日本や欧米諸国における先物・オプション市場の実体を念頭におきながら、危険回避理論と不確実性下の最適化理論の観点から、先物・オプション市場のワーキングとパフォーマンスを理論的、実証的に解明することであった。1970年代から1980年代にかけて、リスクと情報の経済学という新しい経済学が登場し、不確実性の下での意思決定や投機などの問題を処理する新しい分析方法を開発した。本研究においては、このような新しい経済分析方法を積極的に利用することによって、先物・オプション市場の価格形成とバブルの成立、崩壊を学術的に究明することを試みた。 本研究の研究年度は、平成3年度と4年度の2年間である。この平成4年度においては、前年度の研究成果をさらに発展させるべく、現実の日本経済における投機やバブルの問題を中心に研究を進めた。酒井泰弘は研究代表者として、先物・オプション市場のワーキングとパフォーマンスを体系的に研究するためのモデルを作り完成させ、それを土地や外国為替、ゴルフ会員権などの売買をめぐる投機活動の生成と崩壊の問題に適用した。なお、本モデル作りや実証分析にあたっては、関係書類や経済資料を購入するとともに、資料整理や計算補助のため、短期雇用者を常時雇用した。さらに、酒井泰弘は河野正道の両名は、調査・研究の打ち合せのため、東京・大阪 方面へ随時出張するとともに、筑波大学において定期的にワークショップやセミナーを開き、内外の研究者との実りある情報交換を行うことができた。 現在の日本経済は、バブル崩壊後の「複合不況」とよばれる深刻な景気後退局面に入っている。このような不況からの脱出案を考案するためにも、本研究のごとく、先物・オプション市場のワーキングの研究は今後さらに一層深化する必要があろう。
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