この研究は、当初より2年間の計画でスタ-トしたが、残念ながら、科学研究費の助成は1年に限定してのみ認められた。そのため、研究の方は現在も進行中であり、現在は中間点にあたる(研究費については、改めて申請中である)。 平成3年度は、これまでの研究・調査等の整理、既存の理論の検討を行う一方、アパレル・加工食品の2つの分野に関する立ち入った実体の把握に努めた。具体的には、加工食品については、メ-カ-・卸・小売店の各段階でのヒアリングを徹底して行い、詳細な情報を収集し、現在起こりつつある変化の方向と具体的な検討の把握に努めた。アパレルについては、さらに対象を限定し、ウ-ル製品に特化して検討を進めた。途中から、関心が一致したAustralian National UniversityのDrysdale教授を中心とするグル-プとの共同研究に発展し、9月にはCanberraのコンファレンスでそれぞれが論文を報告した(裏面掲載のディスカッション・ペ-パ-を参照)。 改めて強調するまでもなく、取引慣行は取引のための費用を節約するための工夫として形成され維持される。同様に、誰がどこで生産するか、誰から購入するか、どこから購入するか、何を購入するか等という点に関連する検討課題も、取引に伴う「費用」を反映して決定されるはずである。このようなプロセスの結果の一環として、個々の具体的な供給システムと取引慣行が生まれるのであるから、表面的な現象を追かける前に、共通の基盤を構成する「費用」の具体的な姿とそれに結びつく「技術」「情報」について具体的に理解することが必要となる。すでに公表したいくつかの成果につながったとはいえ、現在の状態は、ようやく中間点にさしかかったという程度である。分析対象の複雑さと変化の激しさを改めて思い知らされている。
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