技術革新とマクロ経済、産業構造の変化の関連を数量的に明らかにするため、多部門計量モデルという一定の分析フレ-ムワ-クを用いて、日米独、並びにNIESについて比較分析をすることを目的として、多部門計算モデルの核となる産業連関表デ-タの整備とその分析を中心的に行った。現在各国が公表している産業連関表はその形式や部門、時点において様々であり、これをできうるかぎり比較可能な形で整理することが重要である。ここでは23部門(うち製造業13分門)の産業連関表デ-タとして整備を行った。日本、アメリカ、ドイツ、韓国の1980年代の産業構造の変化の動向をみると、日本では機械を中心とした製造業や金融、サ-ビスに需要がシフトしているのに対し、ドイツでは製造業の中でも化学、電気機械が中心で、他の部門は顕著な変化はみられない。アメリカでは、むしろ金融、不動産、サ-ビス部門などの増加が大きい。韓国の場合、繊維部門の増加もみられるが、むしろ近年では日本と同様、機械部門や金融部門の増加傾向が大である。 日本では購入者価格評価のSNA産業連関表が公表されており、これを生産者価格評価に修正し、実質産出、中間消費、中間投入の時系列デ-タをもとに、RAS法により各年の産業構造の推定した。これにより産業構造変化を代替変化係数と加工度変化係数の時系列変化に要約することができる。これを相対価格や資本ストックのビンテ-ジにより回帰分析を行い、全体として高い説明力があることが明らかとなった。なお、同様の分析を他の国について行うには、時系列デ-タとして実質産業連関表を推定する必要がある。最近、韓国では3カ年の接続産業連関表が公表されていることがわかった。この表を利用することにより、より精度の高い推計が可能になる。今後早急にこの資料を入手、整理した段階で現在の研究結果をふまえてまとめる。
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