研究概要 |
今日の世界に極めて大きな所得不平等が存在するはとは経済厚生上の観点から容認し難いと考えられるのみならず,国際経済における潛存的な不安定要因にも数えられる。本研究は,世界各国のGDP,人口,及び所得分布表の3種類のデ-タを用いて世界全体の所得分布表を作成し,世界全体としてどの程度大きな所得不平等が依存し,それがどのように推移してきたかを計量的に明らかにすることを目的として行われている。 本研究では次のデ-タを用いている。世界各国のGDPを為替レ-トで共通単位に換算することに問題があることはよく知られている。本研究では,国際連合国際比較プロジェクト(ICP)第IV期の研究成果をベ-スとして購買力平価で実質化された世界130ヵ国のGDPが掲載されているPWT4(Penn World Table4)を用いている。次に,所得分布デ-タとしては,国際連合,ILOで近年それぞれ独立に刊行された所得分布統計集を中心として世界91ヵ国の所得分布表を収集した。しかし,アフリカ諸国を中心とする39ヶ国については所得分布表の入手が不可能であった。このような国々についてはやむを得ない処置として,幾つかの代替的な仮定のもとで仮想的な所得分布を代入している。 計測結果からは世界に極めて大きな所得格差が存在することが読み取れる。市場経済121ヵ国を対象とした世界全体の所得分布表(1980年)においては,上位10%の所得シェアは約50%であり,他方,下位40%の所得シェアは約4%に過ぎない。ジニ係数値を測定すると約0.67,タイルエントロピ-係数では約0.82である。更に1960年から85年にかけて世界所得不平等は拡大傾向にある。1960年には0.62であったジニ係数は1970年には0.66に達し,79年以降0.67前後を推移している。
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