1. 昇格と賃金の決定における人事査定制度の実際の機能について、ZOFDと仮名をつけた企業のそれを例に、事例研究を行った。その結果を米国の学術雑誌に発表した。人事査定制度の仕組みをアメリカ人研究者にわかりやすく説明したうえで、その結果としての昇進スピードと給与月額の労働者間格差を厳密な実数値で表示した。制度の仕組みの英語での実例説明は本論文が最初であり、労働者間格差の厳密な実数値による表示は、日本語でも本論文が最初である。 2. 人事査定制度を道具とした差別の実態について、H社K支店のそれを例に、事例研究を行った。その結果を日本の学術雑誌に発表した。労働者の生産性が同一でも、(1)女性労働者または経営に批判的な信条をもつ労働者は差別され、その査定点は低く昇給額は少ないこと、(2)差別のパターンが女性労働者と経営に批判的な信条をもつ労働者の間で異なること、(3)女性労働者と差別されない男性労働者は年齢を考慮して査定点=昇給額が決定されるが、差別される男性労働者は年齢を考慮しないで査定点=昇給額が決定されること、などを実証した。この研究は、人事査定制度の研究としても、雇用差別の日本的形態の研究としても有意義である。 3. 昇進、キャリア、人事査定制度などについての既存研究のサーヴェイを行い、その結果を日本の雑誌に発表した。 4. 以上の研究をもとにして、「日本的雇用システム」と労使関係法制策の関連について、日独間の国際シンポジウムで発表し、また、ドイツで公刊予定の概説書を執筆した。
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