1.本研究は日本における<協同労働><協同社会>を発見し、その実態を調査することを目的としている。<協同労働>とは、人々の労働を結合する新たな方式のことであり、従来のものとは異なることを特徴としている。本研究では、雇用を通じて労働を結合する方式や、一人親方の利益共同体として形成される事業協同組合の下での労働の結合の方式とは異なる新しい労働の結合形態として労働者協同組合を措定した。労働者協同組合という名称を冠していなくとも、実態的に労働者協同組合に類する労働者組織は日本全国に多様に存在しており、この研究ではそれらの鳥瞰図を作成すること、およびその営為の実態を調査分析することを具体的な課題とした。また<協同社会>とはまだなじみの少ない概念であるが、この研究では異種協同組合間協同を通じた地域的な相互扶助のあり方を指している。その仕組みの創造を意識的に追求している事例を対象に実態調査することをこの研究ではいまひとつの課題とした。 2.全国に散在するであろうこうした労働者組織すべての発見は2年という限られた時間では相当に困難であり、鳥瞰図を作成するという当初の目的はその点で必ずしも達成できたとはいいがたい。しかしながら、具体的な対象として、ワーカーズ・コレクティヴにんじん、中高年雇用福祉事業団(労働者協同組合)、タウ技研、パラマウント製靴、大分自交総連傘下のセキタクシーなどに協同労働のあり方を探り、実態調査・分析の結果を雑誌に公表した。また、協同社会の一事例として、長野県での農業協同組合傘下の厚生連病院および厚生連労働組合の地域医療活動を取りあげ、その調査分析結果の一端を公表した。 3.2年間の研究を通じてもなお残された調査対象は数多くあり、かつこれらの労働者組織は族生しつつもあり、協同労働・協同社会の鳥瞰図を作成するためにはこの研究をなお継続する必要があると判断している。
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