研究概要 |
平成3年度の資料収集の中心課題としていた住友関係の資料については,残念ながら公開に関する制約が厳しく,十分な成果をあげられないことが判明したため,この点についての資料の収集は断念せざるを得ないことになった。そのため,やゝ角度を代えて,財閥の本社機能と子会社の企業行動を明らかにするという課題に沿って,財閥とは少し異なる組織をもっていた電力会社を中心とする企業グル-プについて,若干の資料収集を本年度実施した。名古屋に出張したのがそれで,現在中部電力が所蔵している東邦電力関係の資料を主として調査した。 収集された資料等は,アルバイタ-の協力を得て随時整理し,パ-ソナルコンピュ-タを用いたデ-タベ-スの作成を始めている。 研究成果としては,明治の後半期に時期を限っているが,この時期の財閥が産業構造の変化にどのように対応しながら事業を多角化していったのか,その際にどのような組織上の問題に直面したのか,傘下の子会社は,この構造変化にどのような対応をみせたのかをテ-マとして,「多角的事業部門の定着とコンツェルン組織の整備」と題する論文を執筆した。この論文は,橋本寿朗氏と共同で編集した著書『日本経済の発展と企業集団』に収録され,すでに刊行されている。 また,明治後半期の古河財閥の多角化計画を論じた未定稿「古河市兵衛の発電所・精銅事業計画」を執筆,引き続き,戦時体制期から財閥解体にかけての時期についての分析を開始し,小論文を準備中である。
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