1.昨年度に引き続き、科学研究費によって購入した文献資料、マイクロフィルム(特に西部諸州の労働総同盟State Labor Federations大会の議事録)などを利用して、20世紀初頭のアメリカ北西部の労働運動と日系人労働者との関係の分析を行った。また、昨年(1993年=今年度)の夏には再度私費でアメリカを訪れシアトルのワシントン大学図書館の文献、資料、マイクロフィルムを探索した。その結果として、当時のアメリカ北西部の労働運動が初期においてはきわめて差別的であり、まず中国人、ついでは日系人労働者を運動から排除していたこと、そのような中で日系人は自ら労働団体を創設して白人労働者の理解を求めようとしたこと、そしてそのような努力の結果、および北西部の労働運動の中で急進派が勢力を伸ばしたことも影響して、労働運動の日系人に対する態度が徐々に変化していったということ、特に1919年のシアトル・ゼネラル・ストライキ以後は目立って好転したということが明らかになった。 2.今年度に公表した業績は裏面記載の通りである。これは直接的には当時ワシントン州で発行されていた黒人週刊紙=「サーチライト」の記事を整理し、当時の黒人と労働運動との関係、および黒人と日系人との関係を考察することによって、いわば側面から上記のテーマに接近したものである。ただし、上記で述べたような知見を全体としてとりまとめて著書、ないし論文として発表することは、なお今後の課題である。
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