(1)日本の地価・株価高騰の原因は、1980年代後半の金融緩和政策にある。この金融緩和政策の背景には、ドル暴落の危機に対する国際的なドル買介入と金融協力の必要性があった。したがって、日本の地価・株価高騰の遠因として、基軸通貨国アメリカの双子の赤字累積の問題がある。(2)日本の地価・株価高騰は、日本企業の資金調達条件を改善しただけでなく、日本の金融機関の資産拡大を促進した。(3)資金調達条件の改善、金融機関の資産拡大は、設備投資を中心に日本の景気拡大を促進すると共に、地価・株価の投機的急騰を支える要因でもあった。(4)地価・株価高騰に支えられた日本企業の資金調達、日本の金融機関の資産拡大は、国際的に展開した。その結果、国際金融、資本市場における日系金融機関、日本企業、東京金融市場のプレゼンスは1980年代後半に急上昇した(その典型が、1989年のドル建ワラント債の発行ブ-ムであった)。(5)地価・株価下落の原因は、89年以降の(不動産融資の総量規制を含む)金融引締に求めることができる。その背景には、アメリカの景気後退に伴う国際的金融環境の変化が存在する。(6)地価・株価の下落は、日本企業の資金調達条件の悪化と、(BISによる自己資本比率規制とあいまって)日本の金融機関の資産拡大の抑制をもたらすことになった。(7)資金調達条件の悪化、金融機関の資産抑制は、日本の景気拡大の足を引張ると 共に、地価・株価の下落を促進した。(8)地価・株価の下落とBIS規制による日本の金融機関の資産拡大の抑制は、国際金融、資本市場における日本企業、日系金融機関、東京金融、資本市場のシェア縮小をもたらすと共に、国際金融・資本市場自体の縮小を導きつつある。
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