この研究はゲ-ムの理論を利用した開放マクロ経済学を分析手法として、国際通貨システムの諸問題を統一的に理解、解明するための理論的フレ-ムワ-クをつくることであるが、初年度である今年度は、まず、実際に重要な課題になっている国際政策協調の理論を検討した。 第一に、国際政策協調の理論を国際通貨システムの観点から構成するため、ゲ-ムの理論を応用して「2段階ゲ-ム」のコンセプトを明確ににするための理論的検討を行なった。 ついで、第一の研究を踏まえて、安定した、最適な国際通貨システムを考案するうえで欠かせない、「金融政策手段の選択」の問題を取り上げて、それを2つの通貨当局と1つの民間部門という3人ゲ-ムの枠組みの、非協力ゲ-ムのモデル化を試み、そのモデルをさらに「2段階ゲ-ム」へと拡張するための理論的な検討を行なった。 そして、国際通貨システムを考察するうえできわめて重要な「国際通貨の生成」、「国際金融センタ-の形成」という問題に関しては、モデル化して検討する前段における研究の手続きとして、本年度は、まず、ファクト・ファインディングに努めるとともに、その整理、検討を行なった。このため、国際金融や国際通貨の歴史、その現状に関する文献、資料を収集し、それを解読、検討、整理する作業を進めたが、これは意外に困難であり、比較的長い時間をかけたにもかかわらず、十分に成果を得られたとはいえない結果となった。 したがって、今年度はただちに研究成果を取り纏めることはできなかったが、しかし、この作業は次年度以降に予定しているブレトンウッズ体制やEMSなどの評価に活かせるものでもある。
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