1.この研究では、利子率の期間構造を分析することを通して、最近のわが国債券市場、とりわけ長期国債流通市場の構造を解明することを試みた。具体的には、単一方程式をOLSとその修正法で計測し、さらに検定することによって、1985年秋の先物取引開始以後の期間における国債流通市場における利子率の期間構造について、純粋期待仮説が成立するか否かのテストを行う。この期間を選んだのは、先物市場発足により現物市場の構造変化が予想されるためである。まず純粋期待仮説を割引債のタームで定式化し、計測には割引債の利回りデータ、即ち、スポット・レートと誤差項の性質を考慮して修正OLSを用いる。また、残存期間の長い割引債の利回りデータの利用可能性は限られているので、利付債のデータを用いてクーポンがゼロである債券、つまり割引債の利回りを推計している。現物の全銘柄の1期間の所有期間利回りの期待値が不偏性の条件を満たすと仮定すると、残存期間が3年から9年までの割引債の利回りデータを用いる時、計測の結果は、ほとんどの残存期間について純粋期待仮説が棄却されることを示している。 2.本研究の第1段階では、割引債のタームで、純粋期待仮説の成立が否定されている。このことはプレミアムの存在を示唆する。そこで研究の第2段階として、86年から90年前半の期間における残存3年から9年までの割引債の所有期間利回りのプレミアムについてGARCH-M法による計測を行った。結果は、オーバー・タイムに一定のプレミアムが、大部分の残存年のいくつかのケースにおいて認められること、また、時間とともに変化するプレミアムも、過半数の残存年のケースで検出できることを示している。
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