ドイツ統一における財政問題は、1990年8月31日に調印された第2国家条約の第7条で基本的枠組みが定められた。その第7条の基本的考え方は、西ドイツ基本法(憲法)の財政制度を旧東ドイツ地域にも拡大して適用するというものである。ただし、特別規定を設けた。その主たるものは、財政調整に関するものである。第1に売上税の州配分額を東側の新5州に配分する時の特別規定、第2に、西側の10州でおこなっていた水平的財政調整を少くとも1994年までは東の新5州を排除して続行すること等である。 ドイツ統一を財政面から象徴するのは、「ドイツ」統一基金であろう。この基金は1990年5月18日の第1国家条約の調印と同時に、西側11州の間で設立に合意をみたものである。要点は、第1に基金の出資は連邦および西側11州が公債発行の形で資金を調達することによりおこなう、第2に、基金の使途は東側の新5州の社会資本整備に充てるというものである。公債の償還は約30年を見込んである。基金の総額は、1150億マルクを予定している。 この他の問題としては、東側の新5州の経済復興に関連して企業課税の見直し問題がある。ドイツ企業課税の特徴は、連邦・州の共通税である法人税のほかに、市町村税として営業税が存在することである。営業税は外形課税の要素を残しており、法人利潤がない時にも税負担を負う。ここから、東側の経済復興に参加する企業を中心に営業税の廃止要求が強く出た。ところが、営業税は市町村の基幹税であり、市町村は東の社会資本を整備する主役である。社会資本の整備なくしては、企業活動もおこるいえない。連邦政府も、現在、この解決に苦慮している。
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