ドイツ都市会議が毎年作成する『地方財政報告』により旧東ドイツ市町村の財政状況をみると、支出では人件費の増加が著しい。ところが収入ではドイツ統一基金からの財政援助(経常交付金、投資交付金)の役割が依然として大きく、地方税の収入に占める割合は小さいままである。しかし財政援助は一時的である(予定では1994年度で打切り)。したがって地方税制の確立を急ぐ必要がある。 ドイツ地方税制は二本の柱からなる。ひとつは市町村所得税参与と呼ばれるもので、連邦・州の所得税の15%が市町村に分与される。分与方法は基本的に譲与税であって、市町村間の財政力格差を調整するものではない。もうひとつの柱は営業税である(不動産税の役割が大きかった時期もあったが、現在はそうではない)。営業税は物税であり、外形課税である。営業税はいわゆる源泉地原則(輸入非課税、輸出課税)に基づく課税であって、付加価値税のように輸出に際して税の環付をおこなわない。この点ですでに長い間企業から条本見直しの要求が出ていた。 1992年租税改革法はいくつかの改革をおこなったが、営業税については以下の改革をおこなった。(1)営業税のうち収益を課税標準とする営業収益税の基礎控除を引き上げた。(2)基礎控除を控除後の課税収益に対して比例税率にかえて、累退税率(5段階)を適用することにした。(3)いくつかの租税特別措置を改廃した。(4)営業税のうち資本を課税標準とする営業資本税について、課税標準を評価する時、従来の評価法による評価にかえて、税法上の貸借対照表を適用して評価することを認めた。以上により、個人営業者・人的企業(有限会社等)に対して大幅な減税をおこなった。 以上の改革は全ドイツ、とりわけ東ドイツ地域での企業活動を支援する。しかし他方で、地方団体の財源を縮小するディレンマももっている。
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