研究概要 |
本研究は、一方で地価が異常に高騰し他方土地の高度利用が進まないという状況を踏まえ、土地税制および土地政策がそれらの問題解決にどれほど有効に機能するかを検討しようとするものであったが、平成3年度のみ研究補助金が認められたので、広く展開された関連する議論を整理するとともに、主として税と地価、土地利用にかかわる問題について論理的な側面から整理・解明を行うことに焦点を置いた。 土地課税問題の焦点は、1つはそれが地価に与える影響であり、他の1つは土地利用に対するものである。しかし,これらの問題に関わる議論は幾らか錯綜した状況にあると考えられるので、議論を整理しかつ税の効果を明確にするため、土地供給の固定性という特徴を十分に考慮できる世代重複型の一般均衡モデルにおいて、土地収益税,土地保有税等が地価にどのように影響するか、また、土地を生産要素としての利用と宅地利用に分けた場合、各税がそれら2つの土地利用にどのように影響するか、を調べた。これによって、土地課税が地価,土地利用形態にどのような形で影響するかが可成り一般的な形で明らかになったと考えられる。さらにこの場合に、土地課税が経済厚生や所得・資産分配にどのような影響を及ぼすかも検討した。 第2に、土地課税が開発にどのように影響するかについて、土地の低度利用のような問題が一般均衡モデルでは必ずしもうまく取り扱えないので、より素朴な収益の現在値の和として地価が定まるような設定において、土地保有税が土地開発時点,および開発の内容にどのように影響するかという問題を検討した。これについても、異なる議論・結果が導かれる理由を検討し、土地保有税と土地利用の問題をどのように考えるべきかを結果とともに明らかにした。
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