研究分担者 |
永友 清和 大阪大学, 理学部, 講師 (90172543)
小松 玄 大阪大学, 理学部, 助教授 (60108446)
池田 信行 大阪大学, 理学部, 教授 (00028078)
田辺 広城 大阪大学, 理学部, 教授 (70028083)
井川 満 大阪大学, 理学部, 教授 (80028191)
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研究概要 |
多体問題のシコレ-ヂィンガ-作用素についてはこれまで波動作用素の完全性が研究の主な目標となってきた。しかし,物理的に最も重要なS行列については深い解析が行われておらず研究が待たれていた。筆者は2体問題におけるS行列の研究方法をこの場合に拡張し,まずS行列を散乱の方向に応じて局所化する公式を導いた。次に擬微分作用素によって超局所化したレゾルベントの評価式を用いることにより3体問題のS行列の詳しい性質を解明することができた。この問題においては初期状態が2クラスタ-,終期状態が3クラスタ-の場合が最も困難なのであるが,このときS行列は5次元球面上のある2次元部分多様体を除いて連続になることが示される。更にこの2次元部分多様体上には,2体部分系がエネルギ-0において固有状態あるいは共鳴状態をもつとき,S行列が特異点をもつことが示された。この特異点のまわりでの漸近展開も得られ,その展開係数は2クラスタ-散乱のS行列に一致することが示された。更に3体シコレ-ヂィンガ-作用素の一般化された固有函数とS行列の関係についても考察がなされた。この固有函数は空間的方向によって異なる漸近挙動を示し,それに応じて2クラスタ-から2クラスタ-,2クラスタ-から3クラスタ-のS行列が導びかれることが示された。これらは数学的にも物理的にも未発見であった事柄である。更に多体系のレゾルベントの超局所的評価を得る為の手法を改良し,より単純な方法でより深い結果が得られるようになった。このことにより,3体問題において得られている上述の結果を一般の多体系に拡張することも可能になる。
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