研究概要 |
研究実績としては,日本数理科学協会会誌Mathematica Japonicaに、長渕-山本の共同研究により、摂動項をもつリエナール方程式の解の振動性定理を発表している。この論文では振動性の研究にリヤプノフ型の関数を用いたのみならず、新たに不変原理を応用する方法を導入し、従来、国内外で得られている結果を大幅に拡張したが、さらに、ある仮定の下に大域解が存在しかつ振動的であるための必要十分条件を得た。振動性定理で大域解の存在と振動性を同時に与えている定理は殆どないところから研究目的の一つは達成されたものと考えられる。また,長渕-山本による,ある種の2階非線形常微分方程式の解の単調性定理と有界性定理(Math.Japon.)はMarini-Zezza-Cecchi-Villariらイタリー学派の研究結果をより拡張したもので非振動性定理ともいえることからこれも研究目的の一部は達成されたことになろう。 齋藤については,準線形常微分方程式系と線形系の漸近同値性(Math.Japon.)に関する十分条件を定量的な形で与え,従来得られている定性的な十分条件を改良した応用しやすい定理を与えた.また未発表のものでも、安定性の解析に不動点定理を用いる等、解の漸近挙動の解析に新しい方法を導入し、今後、より良い結果が得られるものと期待される。 以上の実績をあげられたのは,講座内でセミナーを定期的に開催したことに加え、米山俊昭(宮崎大学助教授),村上公一(徳島大学助手)らの大阪から遠隔地の研究者と研究討議のセミナーを行うための出張ができたこと、また、総合研究(A)による研究集会をYMCA六甲研修センターで主催し、多くの研究者と共同研究する機会を得られたことが要因としてあげられる。これらは全て当科学研究費の補助によるものである。
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