研究課題
数理生態学によれば、競合関係にある2種類の生体が、その係数が個体数に依存して増大するような拡散及び環境ポテンシャルの影響を受けて移動するとき、その力学系は、強い相互作用を持つある反応拡散方程式系として数学的にモデル化される。このモデル方程式系を解析することができれば、生体の棲み分け現象が微分方程式の言葉で明かにされる。本研究では、この方程式系のL^2空間における解の存在・一意性及び解の表現公式を、空間次元が1又は2の場合に研究し、次ぎのような成果を得た。先ず、時間的局所解の存在と一意性について調べた。本研究の研究代表者により、既にBanach空間における準線形抽象放物型方程式の時間的局所解の存在・一意性に関する研究が為されていたのであるが、適当なスケ-ル関数を導入して未知関数を変換すると、問題の方程式系に対しこの抽象方程式の結果が適用できることが分かった。このような方法により、非常に一般的な形で時間的局所解の存在と一意性を示した。次ぎに、時間的大域解の存在について調べた。方程式系の拡散項に含まれる係数の間に適当な関係が成り立つ時には、その解に対するa priori評価式が成立することを示した。これを用いて、このような時には、上で求めた局所解はいつでも時間的に無限大まで、すなわち大域解に延長できることを示した。さらに進んで、空間次元が1の場合には、定常解の存在について調べた。環境ポテンシャルが十分小さい時には、写像度理論を用いることにより、方程式系の非白明解の存在が示された。
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