研究概要 |
整関数および有理関数(のイテレ-ション)による複素力学系の研究では、そのジュリア集合とそれの補集合であるファトウ集合とは解析的にも幾何学的にも興味ある研究対象である。超越整関数による複素力学系に関しては、1926年のファトウの研究以降、主要な所究としては1960年代以後のベイカ-の一連の研究しかないといってよい。本研究では、超越整関数による複素力学系に現われるジュリア集合を主として調べた。 I 超越整関数による複素力学系で現われるジュリア集合およびファトウ集合についての基本的な定性的性質の研究はファトウによってなされいてるが、これらの諸性質のファトウによる証明は明解なものとは必らずしもいえない。本研究では、ベイカ-が他の研究で用いた手段を一部用いることによって、ジョリア集合が空でない完全集合であるというファトウの定理について、ファトウが与えた証明よりは箇明な別証明を与えることに成功した。またファトウ集合の連結成分に関するベイカ-の定理についても、ある特殊の場合には簡単な証明が与えられることを示すことができた。(これらの結果は公表を検討中である。) II つぎに特殊な超越整関数による複素力学系に現われるジュリア集合の形状を調べた。すなわち関数fμ:z→zexp(z+μ)(μは複素定数)については,もしμ〈2.25であれば、fμのジュリア集合は複素平面全体となり,したがってfμのファトウ集合は空でないことが示された。しかし、その直後に韓国人留学生張哲敏がこの結果を改良して、μ〈2.5であるときも,fμのジュリア集合が複素平面全体となることを証明している。
|