研究概要 |
本研究では,函数解析的方法を駆使して,新たな領域に発展さすきっかけを作ることを目指した.これ等を順に概説する. (1)「エントロピー」を「情報」の概念をベースとして,その理論的展開.これはShannonによって発見された情報理論のスターティング・ポイントであり,情報に関する諸概念は全て,このエントロピーの情報理論的把握を成し遂げることがキーポイントであることを論じた. (2)(1)の結果をvon Neumann観測理論に対応させて量子観測理論の情報理論構成を行なったい、さらにこの結果を不確定性関係に適用し,情報の不確定性と量子力学における不確定性関係が,Fourier解析の手法を加えてエントロピーに定式化なし得ることを証明した.また、統計量の十分性の概念を量子論的確率論の枠組みで論じ、LeCamによる統計量に関する漸近理論を作用素代数上で展開した。 (3)信号解析に於ける基本的手法は標法展開定理である.そこにおける主役は標本函数であり,その数学的取扱いを巡って函数解析を展開した.Formulationはvon Neumannの同スペクトル理論である.この研究によって信号の数理が解析できる.例えば,標本函数系(一径数半群)をスペクトル測度として持つstieltjes積分を行なうことによって運動量作用素が導出され,信号の基本函数が観測理論と直結していることなどを明らかにした. (4)統計物理において平衡状態を表わす概念のGibbs分布は,エントロピー最大原理より導かれるが,近年これをニューロコンピュータの確率モデルに用いBoltzmann機械と呼ばれるシステムが提案された.これは最適値問題を解く汎用的機械としても使える.これに関して理論の解析とコンピュータシミュレーションを行なった. これ等の成果について,国際シンポジウム等に於て発表を行なった.
|