研究概要 |
数値計算の算法に微分係数を取り入れたものは多い。しかし,関数を計算する手続きが与えられたとき,その手続きだけから微分係数を数値的に求めるにはごく最近までいわゆる数値微分法によるしかなかった。数値微分法は手間もかかり精度も悪い。そのため,微分係数を取り入れた算法はあまり用いられていなかった。近年,関数を計算する手続きが与えられたとき,その手続きだけから微分係数を関数計算と同時に精度よくしかも高速に求める手法(高速自動微分法)が開発され,そのシステムもいくつか公開されている。 そこで,今年度は数値積分公式の一つのRomberg積分公式をとりあげ,高速自動微分法によって得られる高階の微分係数を用いて端点補正を施した公式を考え,それらの公式の計算の手間と精度について,理論的・実験的に解析を行った。 その結果,1階の微分係数を取り入れた台形則から出発するRomberg積分は通常のRomberg積分を半分の刻み幅で行ったものと同程度の精度を持つので,Rombergの補外の手続きが有効に働くような積分に対して手間の面から実際上推奨される公式であるとの結論が得られた。この結果を日本応用数理学和文論文誌に発表した(第1巻第4号に掲載されている)。
|