研究課題
本年度の研究目標は、Hyperfunction(佐藤の超関数)を含むような、より広い超関数:一般超関数の空間について調べ、その結果を基礎にして、偏微分方程式論の諸問題について考察することであった。この目標に沿って、我々は、まずGel'fandーShilov(ゲルファントとシロフ)の一般超関数の熱方程式の解による特徴づけに成功した。既ち、一般超関数が熱方程式の解の初期値(境界値)となるための必要充分条件を与えることができた。一般超関数は、ゲルファントとシロフによって、1966年、最初に提起され、その偏微分方程式に対する応用が与えられているが、それ以来殆んど詳しい考察がなされていない。そこで我々は、上記の結果を基礎として、まず、定数係数の常微分方程式と偏微分方程式に対して、微分方程式に於て最も基礎的な問題である解の可能性、正則性について考察した。以上の結果をまとめて、論文とし、Nagoya Math .J.に投稿中である。以上述べたように一般超関数に関する研究は非常に少く、今後更に研究を完成して行く必要がある。特に変数係数の偏微分方程式に於ては、通常の超関数の世界で得られるものと、非常に相異した結論が得られることが、いくつかの実際例から予想される。例えば、Hynerfunctionの範囲では非可解な方程式が、一般超関数まで解の範囲を広げると可解になるというような場合がある。このような点について、特に解明する必要があると思われる。 以上。