本研究の目的は、(1)国立天文台の赤外線研究グループによって開発された512x512PtSi赤外線カメラを天文学に応用するための基礎実験を行うこと、(2)広視野で明るい光学系の望遠鏡に取り付けて近傍銀河の観測をし、それらの構造を研究することである。 口径5cm単レンズ望遠鏡、25cmライトシュミット望遠鏡、東京大学理学部木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡にこの赤外線カメラを取り付けて観測実験を行った。5cm単レンズ望遠鏡ではアンドロメダ銀河全体を約3時間積分時間で銀河の最縁部においてS/N=1を達成して。NGC253については口径25cmの反射望遠鏡で観測を行った。 1991年12月から1993年1月にかけてほぼ1年間木曽シュミット望遠鏡の赤外線観測性能を評価してきた。ハルトマンテストの結果、JとHバンドにおいて星像の大きさは約2秒であることがわかった。これはほぼ理論値通りである。補正板の透過率も問題ない。コールドストップの光学系を入れるスペースがないので、望遠鏡からの熱放射の影響を避けるため口径比とけられを考慮して最適な長さのコールドバッフルを製作した。その結果、K'では望遠鏡からの輻射はスカイの明るさの5倍までに押さえることができた。HバンドとJバンドでは無視できる。 さらに装置の性能を最大限に生かす観測方法の確立、解析方法の改良を行ってきた。近傍銀河の観測を始め、うお座とかみのけ座銀河団メンバーの観測の長時間観測では70分露出でS/N=1でスカイの0.1%の限界等級が達成された。 以上の基礎実験の結果、木曽シュミット望遠鏡の赤外線観測の可能性が確認されたので、より広視野の赤外線カメラの開発を開始した。
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