研究概要 |
前年度に引き続き、研究課題の一環としてA型星2回(95Leo,A3Vと2UMa,A2m)の細密分光解析を行った。95LeoはA3型星で初めて分光解析がなされたが、当初の予想(太陽と同じ化学組成)をくつがえす結果を得た。すなわち、この星では鉄をはじめ鉄族元素が太陽と比べて明らかに不足している。一方希土類などの重元素は太陽よりも多い。このような例はこれまでにあまり見つかっていない。一方2UMaはカルシウム、スカンジウムの不足と重元素の過剰を示し、典型的なAm星であることが示された。 別の研究として、早期型超巨星であるデネブ(l,Cyg)とリゲル(B Ori)の近赤外線波長域にある中性窒素(N I)の吸収線の解析を非局所熱力学的線形成の方法を用いて行った。結果としては、両方の星共太陽に比べて窒素の存在量が有意に多いことが示された。このことは、これらの超巨星の進化段階が、従来常識的に考えられていたように現在赤色超巨星に向かって進化しているのではなく、逆に一度赤色超巨星の状態を経て、青い超巨星に向かって進化している可能性を示すものとして注目される。 1992年7月にイタリアのトリエステで開かれた国際天文学連合(IAU)ユロキウムN0138゙A型星における特異現象゙に出席し、A型星に見られる重元素の組成異常について招待講演を行った。
|