平成3年度の研究計画の第一は、低質量X線星について観測結果を説明できるモデル・スペクトルを求めることであった。低質量X線源GX17+2は「ぎんが」衛星による観測期間中に2倍以上の強度変動を示し、その変動に伴なってスペクトルが大きく変化し、上記の研究には最適の天体である。このX線源の観測デ-タとモデル・スペクトルの比較から次のことがわかった。 1.X線スペクトルは超高密度星(中性子星)の表面から放射される成分と降着円盤からの成分の2成分モデルで変動に伴なうスペクトルの変化を全て説明できる。 2.X線強度の時間変動は中性子星表面から放射される成分のみによる。一方降着円盤からの成分の強度は一定に保たれていた。 また、GS1124ー68に代表されるtransient X線源(ブラックホ-ル候補)は発生から10日ほどでX線強度が最大になり、その後指数関数的に強度が強くなる。減光の時間尺度はこの種のX線源ではすべて約30日である。X線源が矮新星のような過程で明るくなり、連星系の相手の星の表面を緩め、そこから放出された物質を降着すれば、このような指数関数的な減光を説明できる。減光の時間尺度はブラックホ-ルを含む連星系の性質に関係するので、観測から得られる制限から連星系についての興味ある結果が得られるかもしれない。 新たに得られた知見 限られたケ-スについてではあるが、低質量X線星のX線スペクトルが中性子星表面から放射される成分と降着円盤からの2成分モデルで表すことができる非常に明解な解答が得られた。また、時間変動を示すのは中性子表面からの成分であり、降着円盤成分は時間変動を示さないことも分った。 ブラックホ-ル型transient X線源の性質は上記の性質と極めて似ている。低質量X線源とtransient X線源では中心星は異なるが、物質降着について共通の性質を持つことが明かであると考える。これらのX線源への物質降着が単なる降着円盤のみよるものでないことがはっきりした。この解明はこれから行なう。
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