ブラックホールと考えられているX線新星は以下の特徴をもっている。 (1)これらの天体はお互いに極めて接近した連星系である。(2)急激に明るくなった後、時間と共に指数関数的に減光する。半減期はどのX線新星でも約20日である。(3)X線新星のスペクトルは温度が約1KeV(10^7K)の黒体輻射成分と高エネルギー成分の2成分であらわされる。(4)黒体輻射成分は時間と共にゆるやかに変化するが、高エネルギー成分は早い時間尺度で変化する。 上記(3)の黒体輻射成分はブラックホールをとり囲む降着円盤からのX線放射であり、高エネルギー成分はブラックホール近傍で放射されるX線であるとされている。ブラックホールへの物質降着は降着円盤を経由するものとされているが、上記(3)を考えると降着円盤を経由しなく、直接ブラックホール近傍に達する降着物質があることを示している。このような現象はブラックホールのみの特徴かどうかを調べるために、低質量X線星(中性子星への物質降着によるとされている)について調べてみた。その結果、黒体輻射成分と高エネルギー成分がそれぞれ独立に変動することがわかった。したがって、これらのX線天体には降着する物質の流れに2つのチャンネルが必要であることが明らかとなった。 ブラックホール型X線新星の指数関数的減光現象を次のようなアイデアで研究している。X線新星の誘因はブラックホールのまわりにドーナツ状に蓄積した物質の不安定性に由来する(矮新星と呼ばれる天体ではこういった過程によることが明らかである)と考える。この不安定性により物質がブラックホールへ降着することにより、強いX線が放射される。このX線が連星系の相手の星の表面を暖め、物質の降着を容易にする。したがって、物質の降着量はX線強度と正の相関があることになり、X線強度が弱くなると降着率も減少する。このようにして指数関数的な減光が得られるのではないかと考えており、X線を照射された相手の星の大気の状態および降着率の数値計算を行なっている。
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