クェ-サ-の吸収線系のうち、ライマン・アルファ-の森と呼ばれる銀河間雲に起源を持つと考えられている吸収線の進化を調ベた。まず、銀河間ガスの圧力で閉じ込められ、背景紫外光によってイオン化されている雲のモデルを採用し、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)によるz〜0.0の観測結果を再現することを試みた。HSTの結果は、地上からの観測がなされているz>1.7のライマン・アルファ-の森をz〜0.0へ延長したものの10倍以上存在することを示しており、銀河間雲の進化に大きな変化が生じたと考えられる。これを、背景紫外光がz>1.9の時代は時間的に一定のままであったのに対し、z<1.9では背景紫外光が(1+z)の3乗で減少しており、その結果、雲のイオン化率が減少し観測されやすくなったとするモデルを提出した。この背景紫外光の進化則は、クェ-サ-の光度関数の進化則ともよく一致しており、クェ-サ-の進化をライマン・アルファの森でよく追跡できることを明らかにした。 一方、冷たい暗黒物質の重力でとじこめられた銀河間雲の進化を併せてシミュレ-ションした。このモデルでも、銀河間雲は背景紫外光によってイオン化されており、背景紫外光の変化に敏感に反応する。このモデルでは、z>2の時代には背景紫外光は時間と共にゆっくりと増大しz<2となると(1+z)の3〜4乗で減少するとすれば、ライマン・アルファ-の森の数の変化をよく再現することが分かった。同時に、クェ-サ-の連続光の減少則、水素原子の吸収線系の柱密度分布、ライマン・リミット系の数変化もよく再現できる、このモデルでは、質量の大きい銀河雲はz<2の時期に、重力崩壊し矮銀河となることが予言される。このように銀河間雲と銀河形成の相互関連が示唆され、今後銀河形成論と結びつけた研究が必要である。
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