研究概要 |
本報告にかかる研究は、サイクロトロンによって加速された大強度陽子ビームにより単色中性子ビームを生成し、標的核子によって散乱された中性子を飛行時間分析装置によってエネルギー分析し、非弾性散乱をも含めた微分断面積のデータを得て、中性子の光学ポテンシャルのみならず、原子核の基本的励起様式である芯偏極を明らかにすることを目的としている。 (1)東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターのAVFサイクロトロンによって加速された37MeVの陽子ビームを^7Li標的にあてて、35MeVのエネルギー分解能650KeVの準単色中性子ビームを得て、中性子散乱標的に入射し、同センターの高速中性子飛行時間分析装置により、運動量分析された散乱中性子のスペクトルを得た。 (2)中性子発生核反応として、^6Li(p,n)^6Be反応の有用性の検討も行った。 (3)中性子数と陽子数の同じ(N=Z)^<32>Sを標的とした中性子散乱実験は、平成3年度より始め本年をもって完成した。ただし、非弾性散乱については、断面積が小さく、またサイクロトロンのビームタイムの制限もあって、十分な統計精度を持ったデータはとりえず、ひとまず弾性散乱のデータのみにて分散関係をつかった解析を行うことにした。 (4)^<12>Cによる中性子散乱の微分断面積の角度分布の測定は本格的に行い、非弾性散乱も含め、さらに中性子エネルギーについても30、ならびに35MeVにおいて実験を行った。陽子弾性非弾性散乱の解析も共に行い中性子ー核間、ならびに陽子ー核間相互作用ポテンシャルを比較することができた。結果は^<28>Siの場合と違い、両者に誤差の範囲で相違はなく、^<12>Cにおいては芯偏極は中性子陽子で変わらない。 (5)これらの結果を、物理学会年会(1993年春:於東北大学)において発表する。 (6)関連する研究として、25MeVにおける^9Be(d,n)^9B反応に関する論文をNuclear Physicsに公表した。
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