研究概要 |
連星系の一方の星がガスを放出し、他方の星がそのガスを降着する場合、とくにガス降着星が中性子星やブラックホールなどのコンパクト天体である場合、X線星として観測される。降着には二つのモード、つまり降着円盤と星風降着がある。本研究においてはその両者の場合を研究した。降着円盤の理論において、ひとつの大きな問題は角運動量損失がどのようにして起きるかである。降着円盤のなかにあるガスは、コンパクト天体の回りをまわっているが、なんらかの機構で角運動量を失わないと、コンパクト天体に向かって降着しない。通説であるα円盤モデルでは、隣あう軌道を運動するガスの間に、なんらかの機構で粘性が働いて、角運動量が外に向かって輸送されると考えている。しかし、その粘性の起源に関しては決まった定説がないのが現状である。そこで粘性の大きさをαとするという現象論的アプローチがなされている。それにたいして申請者のグループは、すでに降着円盤の2次元数値シミュレーションを行い、伴星の潮汐力によって渦状の衝撃波が発生すること、それにともなって角運動量が輸送されることを見出した。本年度は降着円盤の3次元的構造を明らかにするために東北大学の沢田とともに差分法の手法を用いて計算を行った。その結果、3次元の場合でも2次元の場合と同様に、渦状衝撃波が発生することを見いだした。またインドのタタ研究所のChakrabartiとの共同研究で、渦状衝撃波の理論をSS433に適用し、観測との良い一致を得た。また星風降着流の3次元計算も引き続き行った。とくにドイツのAnzer,Borner、イスラエルのLivioとの共同研究を続行した。等温ガス流がコンパクト天体に星風降着する場合の3次元数値シミュレーションを行い、流れの様子に関するLivioたちの予想とPringleたちの予想を比較し、Livioたちの予想が正しいことを確認した。
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