数値的方法に拠る量子色力学の研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03640270
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 福来 正孝 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教授 (40100820)
• 研究分担者: 宇川 彰 筑波大学, 物理学系, 教授 (10143538)
• キーワード: 格子ゲージ理論 / 数値模疑実験 / 量子色力学 / 弱相互作用行列要素 / 散乱長(ππ散乱)

研究概要

(1)弱相互作用行列要素計算の信頼性の検定。実際の高エネルギー実験で測定される弱行列要素を評価する為には格子上で計算された弱行列要素を繰込理論を用いて、連続空間の物理に結び付ける必要があり、此の操作は摂動計算に依らざるを得ず、其の信頼性が屡々問題視されて来た。此処では先ず此の基本的な疑念を払うベく、最も簡単な場合であるπ中間子崩壊行列要素及び信頼性が最も疑れていた中性K中間子の混合行列要素を例に採り、摂動計算處法の信頼性を示した。
(2)強粒子の質量を精確に且つ信頼出来る様に計算するには格子上での計算に便宜的に持ち込まれた技術的手法に伴う不定性が凡て取り除れる必要がある。我々は先の予備的な検討で質量計算に使用される演算子依存性に問題がある事を見出したので、此の問題を系統的に検討し、問題点を明確にした。然乍、此処で見出された問題が如何に解決されるかに関しては未だ手掛を得ていない。
(3)π中間子散乱の散乱長(scattering length)の計算。強粒子散乱の計算が可能になる事は強粒子物理学にとって次段階に進んだ事を意味する。Luscherによる手法の定式化以来、最も簡単な場合に就いては散乱長の計算が可能である事はアメリカのグループに拠り示されてきたが、一般の場合は今まで困難であると考えられて来た。我々は此の一般的な場合に関して散乱長を計算出来る手法を見出し、具体的な検討を進めつつある。

研究成果

• [文献書誌] M.Fukugita,H.Mino,M.Okawa,G.Parisi,A.Ukawa: "Finite-size effect for hadron masses in lattice QCD" Phys.Lett.B294. 380-384 (1992)
• [文献書誌] M.Fukugita,N.Ishizuka,H.Mino,M.Okawa,A.Ukawa: "Pion decay constant in full QCD" Phys.Lett.B301. 224-230 (1993)
• [文献書誌] M.Fukugita,N.Ishizuka,H.Mino,M.Okawa,A.Ukawa: "Hadron spectroscopy with two flavours of staggered dynamical quarks" Phys.Rev.D. (1993)
• [文献書誌] N.Ishizuka,M.Fukugita,H.Mino,M.Okawa,Y.Shizawa,A.Ukawa: "Weak matrix elements with gauge-invariant staggered operators" Nucl.Phys.(Proc.Suppl.). B. (1993)
• [文献書誌] M.Fukugita,H.Mino,M.Okawa,G.Parisi,A.Ukawa: "Origin of the finite size effect for the QCD hadron mass" Nucl.Phys.(Proc.Suppl.). B. (1993)
• [文献書誌] A.Ukawa: "QCD spectroscopy" Nucl.Phys.(Proc.Suppl.). B. (1993)
• [文献書誌] M.Fukugita,Y.Iwasaki,M.Okawa,A.Ukawa: "Lattice 91,Proceedings of the International Symposium on Lattece Field Theory,November 1991 Tsukuba," North-Holland Publishing, 682 (1992)